H2Bロケットの打ち上げや、はやぶさ2が小惑星リュウグウに無事着陸したというニュースがあり、2014年に種子島へはやぶさ2(H2Aロケット)の打ち上げを見に行った記憶が蘇ってきました。
前回の記事で日本の島の素晴らしさを書きましたが、島の中でも面白かったの種子島。
(前回記事: 島国ニッポンの島々 [0カ国目: Japan])
JAXAや三菱重工といったロケット関係者に加え、おとなと子どものロケットファンや観光客など様々な人が訪れ、街も力をあげてロケット発射の成功を支援しています。
なぜ種子島からロケットを打ち上げるのか
日本のロケットは種子島から太平洋方面(東)に向かって打ち上げられます。
なぜ種子島なのか。1番の理由は、赤道に近いからです。
多くの衛星は打ち上げ後、地球の軌道に乗って周回します。
赤道に近い場所で発射すれば、この軌道に入るための角度調整が少なくて済み、エネルギー効率がよい、つまり燃料を節約することができるのです。
北半球に位置する日本では、南に近づくほど、赤道に近い場所になります。
日本国内でできるかぎり南に近い場所、最南端から打ち上げたいのです。
種子島が選ばれる背景
あれ、南なら、沖縄があるのに。と、思われる方もいるかもしれません。
これには日本の歴史が関係するのですが、沖縄は戦後アメリカの統治下にあり、日本に変換されたのは1972年です。
宇宙センターの設立場所が種子島と決まったのが1966年、完成が1969年ですから、この当時沖縄はまだ「日本」ではなかったのですね。
種子島より南に位置する島としては小笠原諸島もありますが、日本に変換されたのがセンター設立前年の1968年と、設立場所選定の時点では候補地となれませんでした。
さらに海側へ打ち上げるため、広大で平らな土地があること、打ち上げ方向に定期航路と空路がないこと、人工が密集しすぎていないこと、などが選定理由としてあげられます。
お隣の屋久島が高い山で構成されているのに対し、種子島はとてもフラット。
日本の本土で作ったロケット部品を、船で種子島に運びこみ、そのあとはトラックなどで組み立て場まで運搬します。
できるだけトラックが運びやすいよう、まっすぐな道。さらに、信号や看板が邪魔にならないよう移動できる仕様になっています。
島と街全体でロケットのことを配慮している、というのがすごいな、と思いました。
(参考:ファン!ファン!JAXA!、Wikipedia 種子島宇宙センター)
太平洋に向けての打ち上げ
次に、なぜ太平洋側(東)に向かって打ち上げるのか。
地球の自転スピードを活用できるからです。地球は東から西へ、秒速400m以上のスピードで自転しており、東向きに打ち上げれば、この運動エネルギーをロケットのスピードに加速することができます。
赤道に近い場所ではこの自転スピードと遠心力は最大になります。
そして、ロケットは、打ち上げに失敗し落ちてしまう、という可能性もあるので、
万が一の場合でも、住民に被害が出ないよう、東側が開けた場所(海側)を選定します。
「赤道近くで東向きに打ち上げる」というのは、地球を周る衛星打ち上げの場合、世界の他の国でも同じで、例えばアメリカではフロリダという、できるだけ赤道に近くて東側(大西洋)に面した場所からロケットを発射します。
「こちらヒューストン」という映画でおなじみのテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センター(JSC)。ここでは、ミッションコントロールやISS(国際宇宙ステーション)の運用をしていますが、実際の発射をするのは1600km以上離れたフロリダのケネディ宇宙センターです。
ほかにも、西向きに打ち上げるときはカリフォルニア、実験はテキサスの砂漠、太陽軌道に載せるロケットは極付近が有利なのでアラスカ・・・といろいろ使い分けているようです。
ロシアの場合は、海際ではなく内陸に発射場がありますが、広大な砂漠や草原の横に位置しています。
(世界の発射場についての詳しい話はこちら:コスモテック 宇宙宙こぼれ話 ロケット発射場の話(3))
世界一美しいロケット発射場
雄大な太平洋に面した発射場を持つ種子島は「世界一美しいロケット発射場」と言われています。
フロリダの宇宙センターも海際ですが、広大な土地にどーんとある感じ。
対して、種子島の発射場は小さい半島のようなところにあり、両側面を海に囲まれて、その背後には緑の小丘と、本当に美しいです。
(もっと写真を見たい方は:COURRIER Japon 目指すは“世界一美しい発射場”! 日本発の宇宙ロケット打ち上げ現場へ|「奇界遺産」佐藤健寿撮り下ろしVol.1)
打ち上げの12時間前にある、知る人ぞ知る大イベントが、「機体移動」です。
ロケット組み立て棟で組み立てられ完成したロケットを、500m先の発射台に移動します。
打ち上げ直前は、発射台から半径3km圏が立ち入り禁止となりますが、機体移動にはその制限がないためより近くでロケットを見ることができます。
おすすめの場所はロケットの丘展望公園。
たった500m動かすだけ、と思うかもしれませんが、
H2Aロケットは全長50mと、20階建てビルもしくは「進撃の巨人」の壁とほぼ同じ高さ。
さらに重さ300トン近いロケットを、縦置きという不安定な状態で運ぶのです。
その作業はとても慎重に、時間をかけて行われます。
深夜に光に照らされながら、巨大な躯体が静かに動いていく姿は神がかり的ですらありました。
日本の現在の主力ロケットはH2Aですが、一回り大きくパワフルなH2Bは、全長56m、重さ540トンと、さらに迫力がありそうですね。
本当に美しく感動にあふれる種子島のロケット打ち上げ見学ですが、
島というアクセスの制約やローカルビジネスが強いということもあり、計画や予約は困難を極めます。
わたしも何回諦めそうになったか・・・。
次回、アクセスルートやレンタカー、宿の手配について細かくお伝えします。
一部写真提供:機体移動時お隣だったAさん、ありがとうございます。
(前回記事: 島国ニッポンの島々 [0カ国目: Japan])
JAXAや三菱重工といったロケット関係者に加え、おとなと子どものロケットファンや観光客など様々な人が訪れ、街も力をあげてロケット発射の成功を支援しています。
なぜ種子島からロケットを打ち上げるのか
日本のロケットは種子島から太平洋方面(東)に向かって打ち上げられます。
なぜ種子島なのか。1番の理由は、赤道に近いからです。
多くの衛星は打ち上げ後、地球の軌道に乗って周回します。
赤道に近い場所で発射すれば、この軌道に入るための角度調整が少なくて済み、エネルギー効率がよい、つまり燃料を節約することができるのです。
北半球に位置する日本では、南に近づくほど、赤道に近い場所になります。
日本国内でできるかぎり南に近い場所、最南端から打ち上げたいのです。
出典:JAXA 宇宙のうそほんと |
種子島が選ばれる背景
これには日本の歴史が関係するのですが、沖縄は戦後アメリカの統治下にあり、日本に変換されたのは1972年です。
宇宙センターの設立場所が種子島と決まったのが1966年、完成が1969年ですから、この当時沖縄はまだ「日本」ではなかったのですね。
種子島より南に位置する島としては小笠原諸島もありますが、日本に変換されたのがセンター設立前年の1968年と、設立場所選定の時点では候補地となれませんでした。
沖縄返還の範囲 出典:内閣官房 沖縄返還 |
さらに海側へ打ち上げるため、広大で平らな土地があること、打ち上げ方向に定期航路と空路がないこと、人工が密集しすぎていないこと、などが選定理由としてあげられます。
お隣の屋久島が高い山で構成されているのに対し、種子島はとてもフラット。
急勾配や屋久島に対して平坦な種子島 出典:Google map |
海岸沿いの道もまっすぐです |
日本の本土で作ったロケット部品を、船で種子島に運びこみ、そのあとはトラックなどで組み立て場まで運搬します。
できるだけトラックが運びやすいよう、まっすぐな道。さらに、信号や看板が邪魔にならないよう移動できる仕様になっています。
島と街全体でロケットのことを配慮している、というのがすごいな、と思いました。
(参考:ファン!ファン!JAXA!、Wikipedia 種子島宇宙センター)
看板が高めで、いざという時には取り外せる仕様になっているの分かりますか? |
打ち上げ時は半径3km圏内が立ち入り禁止に |
宇宙兄弟とのコラボ |
アニメ ロボティクス・ノーツとのコラボ |
太平洋に向けての打ち上げ
次に、なぜ太平洋側(東)に向かって打ち上げるのか。
地球の自転スピードを活用できるからです。地球は東から西へ、秒速400m以上のスピードで自転しており、東向きに打ち上げれば、この運動エネルギーをロケットのスピードに加速することができます。
赤道に近い場所ではこの自転スピードと遠心力は最大になります。
そして、ロケットは、打ち上げに失敗し落ちてしまう、という可能性もあるので、
万が一の場合でも、住民に被害が出ないよう、東側が開けた場所(海側)を選定します。
海際で、総面積970万平方メートルのもおよぶ種子島宇宙センター 出典:ファン!ファン!JAXA! |
「赤道近くで東向きに打ち上げる」というのは、地球を周る衛星打ち上げの場合、世界の他の国でも同じで、例えばアメリカではフロリダという、できるだけ赤道に近くて東側(大西洋)に面した場所からロケットを発射します。
「こちらヒューストン」という映画でおなじみのテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センター(JSC)。ここでは、ミッションコントロールやISS(国際宇宙ステーション)の運用をしていますが、実際の発射をするのは1600km以上離れたフロリダのケネディ宇宙センターです。
ほかにも、西向きに打ち上げるときはカリフォルニア、実験はテキサスの砂漠、太陽軌道に載せるロケットは極付近が有利なのでアラスカ・・・といろいろ使い分けているようです。
ヒューストンのケネディ宇宙センターにあるミッションコントロールルーム。2006年訪問。 |
ケネディ宇宙センター 衛星受信用アンテナ |
フロリダのケネディ宇宙センター 2016年訪問 |
フロリダの発射場近く |
発射場近くのロボット組み立て場 |
ロシアの場合は、海際ではなく内陸に発射場がありますが、広大な砂漠や草原の横に位置しています。
(世界の発射場についての詳しい話はこちら:コスモテック 宇宙宙こぼれ話 ロケット発射場の話(3))
出典:朝日新聞(今さら聞けない+)ロケット発射場 |
世界一美しいロケット発射場
雄大な太平洋に面した発射場を持つ種子島は「世界一美しいロケット発射場」と言われています。
フロリダの宇宙センターも海際ですが、広大な土地にどーんとある感じ。
対して、種子島の発射場は小さい半島のようなところにあり、両側面を海に囲まれて、その背後には緑の小丘と、本当に美しいです。
出典:コスモテック 宇宙宙こぼれ話 ロケット発射場の話(3) |
(もっと写真を見たい方は:COURRIER Japon 目指すは“世界一美しい発射場”! 日本発の宇宙ロケット打ち上げ現場へ|「奇界遺産」佐藤健寿撮り下ろしVol.1)
打ち上げベストポジション
ロケット打ち上げを見る場所は島内にいろいろありますが、ベストは射点に最も近い、恵美之湯(えびのゆ)と恵美之江展望公園だと思います。
打ち上げ場所にもっとも近い恵美之湯さんの宿はぎりぎり立入禁止区域内。
予約がとれれば通行許可がもらえスイスイ車が進めますが、もちろん大人気で宿泊予約は激戦。
予約がとれれば通行許可がもらえスイスイ車が進めますが、もちろん大人気で宿泊予約は激戦。
恵美之江展望公園も前日からの泊まり組がでるほど人気なので、出来るだけ早く会場に行きましょう。道が狭く、混みます。
わたしたちはHOPEという宿に泊ったのですが、オーナーの方が恵美之湯さんとお友達?だったようで、ラッキーなことに通行許可をもらえました。ありがたい。
部屋がいっぱいでも諦めてはいけません、併設のカラオケルームに宿泊、という手があります! |
ご飯もおいしく素敵なお宿でした |
(恵美之江展望公園の詳細をブログにあげてる方がいました。参考:H-ⅡA F24 観戦日記)
(ほんとに恵美之江がベストなの?と思う方はこちらの比較記事をどうぞ。参考:ロケット打ち上げを見に行こう! 〜 ロケット打ち上げ見学場下見編 〜)
(ほんとに恵美之江がベストなの?と思う方はこちらの比較記事をどうぞ。参考:ロケット打ち上げを見に行こう! 〜 ロケット打ち上げ見学場下見編 〜)
実は一番感動した機体移動
打ち上げの12時間前にある、知る人ぞ知る大イベントが、「機体移動」です。
ロケット組み立て棟で組み立てられ完成したロケットを、500m先の発射台に移動します。
打ち上げ直前は、発射台から半径3km圏が立ち入り禁止となりますが、機体移動にはその制限がないためより近くでロケットを見ることができます。
おすすめの場所はロケットの丘展望公園。
ロケット組み立て場(左)を出て射点(右)に移動する機体 |
徐々に近づき・・・ |
セット! |
たった500m動かすだけ、と思うかもしれませんが、
H2Aロケットは全長50mと、20階建てビルもしくは「進撃の巨人」の壁とほぼ同じ高さ。
さらに重さ300トン近いロケットを、縦置きという不安定な状態で運ぶのです。
横置きでもこのサイズ感 |
その作業はとても慎重に、時間をかけて行われます。
深夜に光に照らされながら、巨大な躯体が静かに動いていく姿は神がかり的ですらありました。
日本の現在の主力ロケットはH2Aですが、一回り大きくパワフルなH2Bは、全長56m、重さ540トンと、さらに迫力がありそうですね。
増田観測所にある、H2-AとH2-Bの比較 |
本当に美しく感動にあふれる種子島のロケット打ち上げ見学ですが、
島というアクセスの制約やローカルビジネスが強いということもあり、計画や予約は困難を極めます。
わたしも何回諦めそうになったか・・・。
次回、アクセスルートやレンタカー、宿の手配について細かくお伝えします。
きれいな種子島の海 |
一部写真提供:機体移動時お隣だったAさん、ありがとうございます。